チームプレイとソロプレイ

これはどちらかというとエンジニア向けの記事です。

僕は、フリーランスのソフトウェアエンジニアとしてかれこれ20年近く生きてきました。今でこそフリーランスは珍しくないですが、僕がそれを選択した当時はけっこう珍しい存在だったと思います。そうした理由は複数ありますが、

  • 一つの会社に縛られるよりも幅広い製品・ソフトウェア技術の経験が得られるし、人脈も広く薄く広がりやすい。僕のような日々チクチクとコーディングするのが三度の飯より好きで、組織のしがらみから距離を置きたい、というタイプの人間には向いてます。
  • 純粋に稼ぎが良い。長期雇用契約よりフリーランス契約のほうが時間あたりの報酬は高くて当然だし、加えて僕は(今より若くて体力あったので)「リモートかつ週3日稼働の契約を4本同時稼働させて全部のクライアントを満足させる成果を出す」みたいなこともしてました。週12日労働ですが若ければ余裕です!
  • 若いうちに前倒しで稼ぎ、それを相場で増やしたほうが効率的。ジジイになってから退職金でゴソっと貰っても意味ねーじゃん? 短期的に税金が高くなるのを考慮してもそっちが有利っぽい。

あたりです。

 2015年あたりからは、移動の時間がもったいないのでミーティングもできるだけオンラインでやり、直接会うのはどうしても必要な場合に限る、という流儀にしていたので、コロナになってからやっと時代が俺に追い付いてきたか、と思いました。

とはいってもフリーランスのデメリットもあります。

  • チームでなければ関われないような大規模なプロジェクトには関わりづらい。
  • 大きい会社の幹部職を狙うライフプランの人には向かない。
  • そのプロジェクトに専念しているメンバーに比べると精神的なコミットメントが少なくなるので、「同じ釜の飯を食う」連帯感の醸成はしづらい傾向がある。パートタイムのメンバーだけから構成されるプロジェクトなら問題はないが、フルタイムメンバーと混成の場合、意外とこれは重要です。

でもまあ長いようで短い仕事人生なので、ある時期には1プロジェクトに専念、別の時期には複数プロジェクトのかけもち、のように幅広く構えるのがいいと思います。1つの会社だけに縛られすぎると、その社内でしか生きて行けず、社外に出ると何の値打ちもない人間になってしまいますからね。それはどうしても避けなければいけない。

 さらにいうと、それに加えて「独自に企画し、リスクとリターンを自分で背負うプロジェクト」の経験が非常に重要です。僕にとってはTacticoがそうです。ソロで1プロジェクトやると、エンジニアリングだけでなく、宣伝やユーザサポートまで全部一通り経験できるし、面白い新機能を思いついたら誰の了解を得ることなくシュッと実装に入れる身軽さはとてもよい。

 チームプレイの重要性を否定するものではありませんが、ソロで1プロジェクトやる経験が将来のチームプレイにプラスの効果を産むというのは確実にあります。

 最近(2022年2月)、配信が始まって話題を呼んだJUNKHEADという映画があります。これに顕著ですが、ソロでやったプロジェクトは良くも悪くも強烈な「臭い」が出ます。MARVELで量産されている何本もの似たような映画たちとは、明らかに1本あたりの重みが違います。それと同様に、ソロで生み出された多数のソフトウェアプロジェクトが世の中にあることによって、後進のソロプレイヤーも育つようになり、世の中がより面白くなると思います。